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入院前から、退院後の暮らしまで。家族で知っておきたいこと。

10日間の入院で
「7年分」の筋肉を失う!?

「7年分」は比較の表現です。
健康な高齢者の10日間の床上安静研究を、加齢による減少と比較した総説に由来します。すべての入院で同じ量が失われるという意味ではありません。

入院は必要な治療を受ける大切な機会です。病状に合う活動・栄養・退院後の暮らしを、医療スタッフと相談して備えましょう。

公式資料・研究の確認日:2026年10月15日

明るい病室で、職員に付き添われながら椅子から立ち上がる高齢者を表したAI生成イメージ。
AI生成イメージ。実在の患者・病院ではなく、動作を指導する写真でもありません。活動の可否は医療スタッフへ確認してください。

01 / 強い数字ほど、条件を知る

10日間で何が変わったのか。
研究は「床上安静」の実験です。

2007年の研究では、平均67歳の健康な男女12人が、トイレを除き、10日間ほぼ連続してベッド上で過ごしました。病気の治療で入院した患者全体を調べた研究ではありません。

下肢の筋肉量の指標

6.3% 減

平均0.95kg減少。DXAという方法で測った下肢の除脂肪量の変化です。解析対象は10人。

膝を伸ばす筋力

15.6% 低下

筋肉の量とは別に測定した、膝を伸ばす力の変化です。解析対象は11人。

原研究の平均変化を自作の図で整理。筋肉量の指標と筋力は別の測定です。DXA除脂肪量は、骨格筋だけの重量を直接測った値ではありません。

小規模な実験の平均値であり、すべての人の変化を予測する数字ではありません。病気、治療、もともとの体力、栄養、入院中の活動によって状況は異なります。

根拠:Kortebein et al.「Effect of 10 Days of Bed Rest on Skeletal Muscle in Healthy Older Adults」JAMA, 2007(PubMed)。

では、「7年分」はどこから?

2019年の査読総説は、10日間の床上安静による減少を7%と紹介し、加齢による筋肉量の減少と比較して「7年分」と説明しています。元の実験が、その人の7年間の老化を直接測った結果ではありません。

加齢の比較に関連する別の研究では、70~79歳の地域在住者1,880人を3年間追跡し、下肢除脂肪量の年平均減少は約1%でした。対象者・測定方法・個人差があり、一つの年率で誰にでも換算できるわけではありません。

「身体年齢が7歳上がる」「回復に7年かかる」「二度と戻らない」という意味ではありません。この見出しで伝えたいのは、活動が大きく制限される短い期間にも、体の変化へ目を向ける大切さです。

比較表現の出典:Bowden Davies et al.「Reduced physical activity in young and older adults: metabolic and musculoskeletal implications」2019(総説)。加齢の一次研究例:Goodpaster et al.「The Loss of Skeletal Muscle Strength, Mass, and Quality in Older Adults」2006。

02 / 重なることはあっても、同じではない

廃用、サルコペニア、フレイル。
名前だけで自己判断しない。

一般的な概念の整理です。診断表ではありません。
言葉主な考え方確認すること
廃用症候群不動・低活動・寝て過ごす状態などに伴う、二次的な機能の低下。病状と活動制限、生活動作、個別のリハビリ方針。
サルコペニア筋肉量、筋力、身体機能などを医学的に評価する状態。筋肉量だけで判断せず、医療者による評価を相談。
フレイル身体面に加え、認知・気分・社会とのつながり等も含む、健康と要介護の間の状態。食事、活動、生活全体と支援の必要性。

入院しただけで、これらの病名や状態が一律に決まるわけではありません。症状や生活上の変化を伝え、医療・介護の専門職に相談しましょう。

参考:厚生労省委託研修「在宅医療におけるリハビリテーションの役割とは」/日本サルコペニア・フレイル学会「フレイルとは」。

03 / 入院前・入院中の備え

必要な安静を守り、
できることを具体的に聞く。

病気や手術の治療で、安静が必要な時期もあります。自己判断でその指示を変えず、医師・看護師・理学療法士等に「今の状態で何ができるか」を確認します。

  1. 入院前の暮らしを伝える歩けた距離、トイレや着替え、使っていた杖、食事などを共有。
  2. 今日できる活動を聞く座る・立つ・移動する等の可否、必要な介助、避ける動作を確認。
  3. 退院後の目標を相談自宅の生活動作、家族の支援、リハビリ・栄養相談を整理。
医療スタッフと話す順番の例です。具体的な動作・回数を指示する図ではありません。

「動いていいですか」を、もう一歩具体的に。

リハビリ以外の時間にしてよい活動、ひとりで行ってよい範囲、スタッフを呼ぶ場面を確認します。病状が変われば、活動の範囲も再確認しましょう。

家族は、いつもの状態を伝える。

入院前にひとりでできたこと、最近の転倒や食欲の変化、暮らしの困りごとを伝えると、退院後の生活を相談する手がかりになります。

体調の異変を、頑張って乗り越えない。

活動中に胸の痛み、動悸、めまい、新しい息苦しさ、強い痛み等が出たら、活動を中止し、入院中はすぐスタッフへ伝えてください。退院後も医療機関へ相談します。急な呼吸困難や胸・背中の突然の激痛等の緊急症状では119番を利用します。

参考:国立長寿医療研究センター「リハビリテーション科 臨床概要」/厚生労働省「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」/消防庁「救急車利用リーフレット 高齢者版」。一般の運動ガイドを入院中の一律の運動処方には使いません。

04 / 活動と一緒に、食事も相談

食べられないことも、
早めに伝える。

食事が進まない、体重が減った、むせる、かみにくいといった変化をスタッフへ伝えましょう。活動の評価とともに、栄養や口腔・飲み込みの状態を相談することが大切です。

食べた量・困る場面を伝える

食事をどの程度残したか、食べるときにつらいこと、食欲の変化を共有します。自分で食べられるか、食事の姿勢や形態も含めて相談します。

制限がある方は、量と食べ方を個別に

腎臓病、嚥下の問題、食事や水分の制限がある方は、医師・管理栄養士へ確認します。たんぱく質やプロテイン、サプリメントを一律に増やす対策は勧めません。

参考:国立長寿医療研究センター「低栄養とサルコペニアの摂食嚥下障害」/日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024 第8章 栄養」。

05 / 退院後を見据える

回復の目標は、
その人の生活から考える。

トイレへの移動、着替え、食事、入浴など、家で必要な動作を医療・介護の専門職と確かめます。退院前に、自宅で行う活動、休む目安、介助、通院やリハビリの予定を相談しましょう。

  1. できる動作と、支援が必要な動作を分ける

    入院前と現在の違いを確認します。家族が手助けする場合も、介助の方法をスタッフに教えてもらいましょう。

  2. 活動・栄養・診療の予定を共有する

    診察、薬、リハビリ、栄養相談の予定を確認し、体調が変わったときの連絡先を家族と共有します。

  3. 自宅とサービスの準備を相談する

    退院支援担当者、医療ソーシャルワーカー、必要に応じてケアマネジャー等へ、生活や介護の支援を相談します。

本人の努力だけで、回復は決まりません。

病気、手術、活動の制限、栄養など複数の要因が関わります。回復の速度や必要な支援には個人差があります。本人を責めたり、無理に活動させたりせず、その人に合う支え方を相談しましょう。

参考:国立長寿医療研究センターの個別リハビリ・退院支援/厚生労働省「医療ソーシャルワーカー」。確認の順番や家族の心構えは編集上の提案です。

06 / 退院前に、住まいも見直す

いつもの家が、
今の体で暮らしやすいか。

入院前は気にならなかった段差や暗い廊下が、退院後の移動の負担になることがあります。家の写真や間取りを、退院支援・リハビリ担当者と共有して相談できます。

毎日使う動線から確認

寝室・ベッドまわり

立ち上がりや移乗、椅子やベッドの高さ、足元の物・コード。

廊下・トイレ

夜間の明るさ、動線の障害物、段差、滑りやすいマット。

玄関・階段

出入りの段差、必要な介助、手すりや歩行補助具の相談。

浴室・洗面

移動や入浴の可否、足元の滑り、介助方法と用具の確認。

住環境を相談するための整理図。手すり・用具の選び方や設置位置は、身体機能と動作に合わせて専門職へ確認します。

福祉用具や手すりは、本人の体と生活動作に合うかを確かめて選びます。住環境の点検だけで転倒をなくせると考えず、身体機能、薬、介助等も含めて相談しましょう。

住宅改修は、工事を始める前に相談する。

介護保険の住宅改修には、条件に応じて手すり設置や段差解消等を支える仕組みがあります。対象・手順・費用は個別に確認が必要です。施工前後の申請があるため、工事前に自治体の介護保険窓口やケアマネジャーへ相談してください。

参考:国立長寿医療研究センター「高齢者の在宅医療を支援する薬剤師向けガイド」2024/厚生労働省「福祉用具・住宅改修」。写真・間取りの共有は、相談を具体化するための実務提案です。

07 / 医療スタッフ・家族と話すために

「帰ってから困ること」を、
入院中から相談する。

相談メモの例

入院前は、どこまで歩けて、何をひとりでできていましたか。
今は起き上がる・座る・立つ・トイレへ行くとき、どの範囲まで、どの介助でできますか。
リハビリ以外の時間にしてよい活動と、避ける動作を教えてください。
食べる量、食事の形、水分やたんぱく質の制限で注意することはありますか。
痛み・息切れ・めまい等、活動を中止して連絡する目安は何ですか。
退院後の診察・リハビリ・栄養相談の予定と、相談先を確認したいです。
自宅の段差、寝室からトイレまでの動線、階段、家族の介助について相談したいです。
夜間や休日に困ったときの連絡先を教えてください。

診断票ではなく、相談を整理する例文です。

準備・相談済み 0 / 8 項目

項目数は準備の目安で、健康度や転倒リスクを診断する点数ではありません。チェックは保存されず、症状・薬等を入力するフォームもありません。

08 / よくある質問

焦らず、条件を確認する。

10日入院すると、全員が7年分の筋肉を失うのですか?

そうではありません。元研究は健康な高齢者の10日間の床上安静実験です。「7年分」は総説が加齢と比較した表現で、すべての入院や個人に同じ減少が起こるという意味ではありません。

筋肉を取り戻すのに7年かかりますか?

見出しは回復期間を示していません。回復の経過は病気、治療、もともとの体力、活動・栄養等で異なります。個別のリハビリと生活目標を医療スタッフへ相談してください。

安静を指示されています。それでも動くべきですか?

安静の指示を自己判断で変えないでください。必要な安静を守り、許可される活動と必要な介助を医師・看護師・リハビリ担当者へ確認しましょう。

歩けない場合は、何もできませんか?

医療スタッフが状態を評価し、適した活動・リハビリを検討します。座る、日常動作を練習する等の可否も含めて相談し、このLPだけで動作を始めないでください。

プロテインを飲めばよいのでしょうか?

まず食事全体と体の状態を確認します。腎臓病、飲み込みの問題、食事制限がある方は特に、医師・管理栄養士へ相談してください。量や補助食品の要否は人によって異なります。

筋肉が落ちたのは本人の努力不足ですか?

病気、手術、活動の制限、栄養等、複数の要因が関わります。本人を責めたり無理に運動させたりせず、専門職と相談して支え方を考えましょう。

退院したら、すぐ元の暮らしに戻れますか?

必要な支援と回復の経過は一人ひとり異なります。生活動作、介助、診察・リハビリ、住環境を退院前から確認してください。

手すりを付けてから介護保険を申請できますか?

住宅改修は施工前後の申請が必要な仕組みです。工事を始める前に、ケアマネジャーや自治体へ対象・手続き・費用を確認してください。

退院後の住まい・実家の整理を考える方へ

体の相談は医療へ。
暮らす場所の相談も、早めに。

活動・栄養・リハビリは医療スタッフへ確認してください。住まいの見直し、住み替え、実家の不動産整理については、終活専門不動産の公式窓口からご相談いただけます。

このLPは一般的な情報です。診断や個別の運動・栄養処方は行いません。治療・安静の指示と、担当する医療者の判断を優先してください。