住まいと、これからの暮らしを考える。住まいの今後を相談する ↗

Invisible work / 暮らしを支える、見えない仕事

「家族がやる」で、もう回らない。

シャドーワークを、
住まいの問題から考える。

親の通院、退院後の準備、実家の管理、終わらない手続き。暮らしの裏側には、誰かが引き受けている仕事があります。その負担の中に、本当に必要な支援とサービスの手がかりが隠れているのではないでしょうか。

終活専門不動産 編集記事|確認:2026年10月22日

ダイニングで書類とスマートフォンを見ながら家族の暮らしの段取りをする人。AI生成イメージ。
家の中には、
見えていない仕事がある。
写真はAI生成イメージです。

The other workday

仕事が終わっても、
家族の「段取り」は終わらない。

「病院に連れていくだけ」「実家の様子を見るだけ」。そう言われる仕事の前後には、調べる、予約する、連絡する、確認する、記録するという作業が続いています。

08:30親の通院予約と
送迎の調整
12:15支援者へ連絡し
予定を共有
16:00実家の鍵と
修理の立ち会い
20:30請求書と
契約内容の確認

上は負担の重なりを示す架空の例です。実在する家族の記録ではありません。

この仕事が見えなければ、本人の疲れも、必要な予算も、引き継ぐ相手も見えてきません。善意で続けていた一人が入院したときに、初めて暮らしの仕組みの脆さに気づくこともあります。

01 / What is shadow work?

シャドーワークとは何か。

賃金のある仕事や、
商品・制度の利用を支える
無報酬の仕事。

イヴァン・イリイチは1981年の著書『Shadow Work』で、この問題を論じました。通勤や買い物、家事、制度への対応など、経済活動の外側に置かれがちな仕事に目を向ける概念です。[1]

ただし、家族の営みをすべて負担と捉える言葉でも、無償の仕事をすべて有料化すべきだという提案でもありません。イリイチの議論には、暮らしが市場や制度に依存していくことへの批判もあります。

無償ケア
育児・介護などの直接的ケアと、調理・掃除など生活を支える仕事。シャドーワークと重なる部分がありますが、同義ではありません。[2]
名もなき家事
在庫の確認や予定の調整など、名前が付きにくい細かな家事を見えるようにする日常的な表現です。
セルフサービスの仕事
利用者自身が行う予約・入力・認証・決済など。便利さの裏で、本人や家族が負担する作業にも注目できます。

このLPで深掘りする範囲
原著の視点を手がかりに、家族が担ってきた「見えない調整仕事」を住まいから考えます。この当てはめは本記事の分析です。心理療法などで使われる同名の言葉とは対象が異なります。

02 / A changing family system

家族の形は変わった。
家族頼みの仕組みは、変わったか。

「家族システムの崩壊」という言葉は、支え合いの限界を問いかけます。ただ、日本の家族が一律に崩壊したと、ひとまとめにはできません。単身、別居、共働き、高齢の夫婦、ひとり親など、暮らしの条件はさまざまです。

考えたいのは、家族の人数や距離が変わっても、家族の誰かが手配し、動けることを前提にしていないかという点です。女性や近くに住む子どもへ偏った役割を、そのまま次世代へ引き継ぐことにも限界があります。

一般世帯に占める単独世帯の割合

2020年
38.0%
2050年
推計
44.3%

国立社会保障・人口問題研究所の2024年推計。2020年国勢調査を基礎とする将来の見通しで、2050年の実績値ではありません。[3]

65歳以上の単独世帯は

1,084万世帯へ

2020年738万世帯 → 2050年1,084万世帯との推計。単身であることは、孤立や支援の不在と同義ではありません。[4]

家事関連時間にも、偏りがある

6歳未満の子供がいる「夫婦と子供の世帯」/週全体の1日平均

夫
1時間54分
妻
7時間28分

2021年社会生活基本調査。家事・介護看護・育児・買い物の合計で、調整仕事だけの測定ではありません。2026年調査の結果は確認日時点で未公表です。[5][14]

介護・看護を理由に前職を離れた人は

10.6万人

2021年10月〜2022年9月の1年間。2022年就業構造基本調査。離職後に再就職した人も含みます。[6]

これらは家族の条件と負担を考えるデータです。「シャドーワーク市場の規模」や「家族崩壊の証明」を示す数値ではありません。

03 / Housing is more than a building

住まいの問題は、
建物の中だけに
収まらない。

家があっても、買い物に行けない。退院できても、食事が届かない。相続した実家があっても、誰も管理できない。

住まいは、建物と「暮らしを回す仕組み」の両方で成り立ちます。後者を家族だけに任せると、負担が家の外から見えなくなります。

日々の生活食事・買い物・掃除
移動と通院予約・交通・同行
家の維持鍵・修繕・管理
人との連絡家族・支援者・近隣
契約と手続き書類・請求・認証
もしもの備え入院・相続・死後事務
本記事の整理図。建物と暮らしを支える仕事を、同時に考えます。

住み替えの比較項目に、「誰が支えるか」を加える。
価格・広さ・段差に加え、交通、買い物、相談先との距離、管理の手間、支援の使いやすさ、本人が続けたい暮らしまで確かめます。住み続ける・整える・住み替える、どの選択にも段取りがあります。

04 / Five places to look

見えない仕事の中に、
必要なサービスが隠れている。

困っているのは「一つの作業」より、その前後のつながりかもしれません。5つの場面から、負担と支援を分けて考えます。

以下の支援例は課題を整理するための提案です。終活専門不動産がすべてを直接提供するという表示ではありません。

01通院・退院診療が終わっても、暮らしは始まらない。

見えない仕事予約、移動、持参物、説明の共有、配食、福祉用具、家の鍵。病院を出てから自宅の生活が動き出すまでに、仕事が連なります。

求められる支援通院同行、病院の退院支援、介護・生活支援の開始をつなぐ調整。

確認したいこと
同行・説明の補助と医療判断は別。待ち時間・交通費、退院翌日以降の担当も確認します。[8]

02賃貸への入居部屋の紹介だけでは、入居できないことも。

見えない仕事申込書類、家賃保証、緊急連絡先、引越し、電気・水道、見守りの手配。「誰かがやる」仕事が入居の入口に集まります。

求められる支援居住支援法人等への相談、保証や見守りへの接続、生活開始の支援。

確認したいこと
緊急連絡先・家賃保証・身元保証・死後事務を混同しない。担当と契約をそれぞれ確認します。[7]

03片付け・住み替え荷物を運ぶ前に、決めることがある。

見えない仕事残す物の選別、家族への確認、処分・買取の見積り、搬出、住所変更。本人の思いと実務をつなぐ調整も仕事です。

求められる支援本人が参加できる整理、残す物の目録、引越し前後の連絡整理。

確認したいこと
捨てる物を決める権限、通帳・写真・端末の扱い、追加費用を確認。家庭ごみの回収は自治体の許可・委託等を確認します。[13]

04遠方の実家・空き家誰も住まなくても、管理の仕事は残る。

見えない仕事鍵、郵便、通風、庭、設備、不具合、親族への連絡。相続や売却を決めるまでにも、現地で動く人と記録が必要になります。

求められる支援定期管理、写真による報告、修繕の取次ぎ、必要な専門家への接続。

確認したいこと
管理と売却は別契約。処分・修繕の権限、共有者の意思、紹介料などの利害関係を明らかにします。

05デジタル手続き便利な仕組みが、家族の作業になる。

見えない仕事オンライン予約、認証、請求確認、契約の変更や解約。本人が使えないときに、家族が調べて窓口を探す負担が生まれます。

求められる支援本人の操作を助ける伴走、紙・対面の経路、契約先と正式な手続窓口の整理。

確認したいこと
本人の同意と代理権を確認。他人になりすましたログインや、暗証番号の一括預かりを前提にしない。

Service opportunities / 本記事の考察

代行の先にある、
「暮らしをつなぐ」仕事。

困り事の発見から、役割分担、支援の開始、実施後の確認まで。家族が無償で担ってきた調整を、確認できる仕事として設計する余地があります。

01

退院後の生活開始をつなぐ

病院から自宅へ

支援の形配食・福祉用具・介護・鍵の担当表と、開始日の確認を一つに。

設計の条件病院・ケアマネジャー等との連携、本人の希望、翌日以降の確認。

02

住み替え前後の連絡を整える

契約から新生活へ

支援の形住所変更、各種契約、荷物、緊急連絡先の抜けを一覧に。

設計の条件代理可能な範囲と専門資格が必要な業務を分ける。

03

遠方の実家を報告でつなぐ

現地と家族の間

支援の形鍵・管理日・写真・不具合・対応履歴を、家族が確認できる形に。

設計の条件管理業務と売却提案を分け、不要な工事を勧めない。

04

手続きを一緒に進める

紙・電話・画面の間

支援の形説明を整理し、本人のペースで入力・照会・予約を支援。

設計の条件同意、個人情報の最小化、紙や対面の選択肢を残す。

これらは課題から導いた事業・サービスの仮説です。需要や採算性を実証したものではありません。実際の提供には地域の支援資源、費用負担、業務の権限・資格、継続性の検討が必要です。

Not everything needs a price tag

すべてを有料化する前に、
仕事そのものを減らせないか。

負担が見えたら、すぐに「買うサービス」を増やすだけでは解決しません。支援を探し、申し込み、業者同士をつなぐ仕事が、再び家族へ戻ってしまうからです。

01

減らす

契約・連絡先を整理する。使っていない契約を本人と確認する。移動や管理の手間が少ない住まいを考える。紙・電話・対面も残す。

02

分ける

「手伝う人」だけでなく、予約・確認・記録の担当まで決める。子どもや一人の家族へ固定せず、不在時の代わりも考える。

03

外へつなぐ

公的支援を確認し、足りない部分を民間や地域の支援へ。本人の同意のもと、同じ説明を何度もしなくてよい引継ぎを整える。

良いサービスは、家族の負担を別の誰かの見えない低賃金労働に移すだけのものではありません。働く人の時間・移動・記録にも対価を払い、利用できる人を所得だけで分断しない仕組みを、公的支援と合わせて考える必要があります。

05 / Start with the right door

公的支援と民間サービスを、
役割でつなぐ。

高齢者の暮らし・介護の不安

まずは地域包括支援センターへ。本人や家族の相談から、介護・福祉・地域の支援を考える入口になります。[9]

入院・退院後の生活

病院の相談員や退院支援の窓口へ。家族ができること・難しいことを早めに伝え、地域の支援者と分担します。[8]

賃貸への入居と生活の支え

自治体の住宅窓口、居住支援法人等へ。指定法人でも、対象地域や提供内容、料金は一律ではありません。[7]

福祉サービス利用・日常の金銭管理

社会福祉協議会の日常生活自立支援事業も選択肢です。判断能力が不十分でも事業の契約内容を理解できる人などが対象で、誰でも使える家事代行とは異なります。[10]

住まいの制度にも、支える機能を

2025年10月から「居住サポート住宅」が始まっています。

大家と居住支援法人等が連携し、日常の安否確認、訪問等による見守り、生活や心身の状態が不安定になったときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅です。建物を貸すことと生活を支えることを、結びつける仕組みです。[7]

ただし、24時間の介護や、あらゆる家族の役割が含まれる意味ではありません。同じ改正で居住支援法人の業務に追加された、本人の委託に基づく残置物処理も、大家が自由に家財を処分できる制度ではなく、契約と権限の整理が前提です。[7][12]

Before you sign

「全部お任せ」の前に、
6つを確かめる。

生活支援サービスを選ぶときの確認表
料金入会金・月額・都度料金・時間外・交通費・預託金・解約返金。何にいくら払うか。
権限同行、説明補助、手続代理、保証、財産管理、死後事務。誰が何を決められるか。
情報と鍵共有先・同意・保管期間・廃棄方法。家の鍵、通帳、スマホをどう管理するか。
継続性担当者の不在、夜間、事業撤退。支援や預けたお金を誰が引き継ぐか。
本人の意思家族や業者の都合で住み替え・処分・売却を決めない。断る・変更する方法はあるか。
確かめ方作業記録・領収書・残高・苦情窓口。紹介料等の利害関係が分かるか。

長期の生活支援・身元保証・死後事務などを含む契約では、国のガイドラインやチェックリストも確認してください。[11]

06 / Make the invisible visible

まずは、あなたが担う仕事に
名前をつけてみる。

現在関わっているものを選んでください。負担を点数で診断するものではなく、相談や家族の話し合いに使う棚卸しです。

チェック内容はこのページ内だけで扱い、送信・保存しません。再読み込みで選択は消えます。「相談メモに保存」を押した場合のみ、端末へテキストファイルを保存します。

Questions

よくある疑問

シャドーワークは、家事や介護と同じですか?

重なる部分はありますが、同義ではありません。イリイチの概念は賃労働・商品や制度を支える無報酬の仕事を捉えるものです。このLPでは、その視点を使って家族の見えにくい調整仕事を考えています。

家族がいるのに外へ頼むのは、無責任ですか?

家族の人数だけで、距離・時間・健康・担える内容は決まりません。本人の希望を確認し、家族で担うことと外へつなぐことを整理するのが出発点です。

住み替えれば負担はなくなりますか?

移動や管理が楽になる場合はありますが、費用や手続き、支援とのつながりが新たに必要になることもあります。建物の条件と生活支援の両方を比較してください。

民間サービスに全部任せれば安心ですか?

対応範囲・権限・夜間対応・費用・終了時の引継ぎは事業者ごとに異なります。保証、日常支援、財産管理、死後事務をひとまとめにせず、契約ごとに確かめます。

事業として、何が求められるのでしょうか?

単発の作業だけでなく、困り事を整理して適切な窓口につなぎ、支援が始まったか確認する役割が考えられます。ここでの提案は課題から導いた仮説で、需要規模や採算性を証明したものではありません。

最初はどこに相談すればよいですか?

高齢者の暮らし・介護は地域包括支援センター、退院は病院の相談員、入居は自治体の住宅窓口や居住支援法人が入口になります。住まいの今後は、現状と希望を整理して不動産の相談窓口へ。

A home that supports your life

家族の頑張りだけで、
暮らしを支え続けないために。

今の家に住み続ける。手間を減らして整える。支援につながる場所へ住み替える。
家のことと、これからの暮らしを、一緒に整理してみませんか。

終活専門不動産|運営:Well-base株式会社
03-6416-9057 営業時間 9:00〜18:00
ご相談の内容に応じて、対応できる範囲や専門家との連携を確認します。

Sources & editorial note

出典・確認資料

確認日:2026年10月22日。調査年・公表年・将来推計を区別しています。制度の利用条件・支援内容・料金は地域や事業者によって異なるため、実際の窓口・契約で確認してください。統計と制度の説明に対し、サービスの着想・住まいとの結びつけは本記事の考察です。

  1. イヴァン・イリイチ『Shadow Work』(1981) ↗出版社の書誌。概念の原著。
  2. ILO「Care economy」 ↗有償・無償のケアの位置づけ。
  3. 社人研「日本の世帯数の将来推計・2024年推計」公表要旨 ↗2024年4月12日公表。2020年を基礎とする2050年までの推計。
  4. 社人研・同推計の概要 ↗65歳以上の単独世帯数、表4。
  5. 総務省「2021年社会生活基本調査」結果の要約 ↗2022年8月31日公表。家事関連時間、表2。
  6. 総務省「2022年就業構造基本調査」結果概要 ↗2023年7月21日公表。介護・看護による離職、表8−4。
  7. 国土交通省「住宅セーフティネット制度」 ↗2025年10月1日施行の改正法、居住サポート住宅・居住支援法人。
  8. 厚生労働省「身寄りがない人への対応」 ↗入院・退院や意思決定を支えるガイドライン等。
  9. 厚生労働省「地域包括支援センター」 ↗高齢者の暮らしや介護の総合相談。
  10. 厚生労働省「日常生活自立支援事業」 ↗対象と支援内容の確認。
  11. 消費者庁「高齢者等終身サポート事業の利用に関する注意点」 ↗ガイドライン・契約時のチェックリスト。
  12. 国土交通省・法務省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」 ↗契約解除・家財処理の権限をあらかじめ整理する資料。
  13. 環境省「家電リサイクル法・よくある質問」 ↗家庭ごみ回収業者の許可・委託等。
  14. 総務省「2026年社会生活基本調査・概要」 ↗確認日時点では調査実施中。2026年の結果は掲載していない。