高齢期の自宅内事故と、住まいの安全
住み慣れた家、安心を整える。
毎日通る廊下、いつものお風呂、長く使っている収納。「慣れているから大丈夫」と感じる場所にも、コードや段差、温度差、無理な作業による危険があります。片付けや掃除で住まいを整えるつもりが、けがにつながってしまう場合もあります。
高齢期の住まいの安全は、本人の注意だけでなく、環境と作業の方法を見直すことから考えます。公的な事故情報を確かめ、家の中の確認、頼める作業、必要な改修や住み方を、本人と家族で整理しましょう。
終活の片付けは、暮らしを整えるための備えです。危険な高所作業や重い家具の移動まで、一人で無理に終わらせる必要はありません。安全に続けられる進め方を用意しましょう。
情報確認日:2026年10月7日
終活専門不動産では、高齢期の暮らしに合わせた住まいの管理・活用・売却、住み替えや引継ぎの方針をご相談いただけます。体調・治療・入浴方法は医療機関、生活・介護の支援は地域包括支援センター等、建物の診断・改修や危険な作業は対応する専門家・業者へ確認します。
自宅の安全にも、目を向けてみましょう
交通安全と一緒に、家の中の備えも
道路での事故には注意していても、自宅の段差や入浴、掃除中の作業は、いつもの習慣として見過ごされやすいものです。住み慣れていることと、危険がないことは同じではありません。
ここでは2024年の人口動態統計を使い、全国・両性・65歳以上に対象をそろえて、家庭で起きた主な不慮の事故と交通事故による死亡を比較します。
| 比較する区分 | 対象と集計の範囲 | 死亡者数 |
|---|---|---|
| 家庭で起きた主な不慮の事故 | 2024年・全国・両性・65歳以上。事故の発生場所が家庭(W00–X59)。 | 15,363人 |
| 交通事故 | 2024年・全国・両性・65歳以上。人口動態統計の交通事故(V01–V98)。 | 2,103人 |
出典:人口動態統計・家庭における主な不慮の事故による死亡、人口動態統計・不慮の事故の種類別の死亡。65〜79歳と80歳以上を合計して掲載しています。対象は、日本における日本人の死亡です。
この集計の家庭での人数は、交通事故の人数の約7.3倍です。これは死亡者数の比較で、個人の事故発生確率を表す倍率ではありません。けがをした人の数や、すべての事故の総数とも異なります。
統計の「家庭」は、住居の建物内だけでなく私有地や車庫等も含みます。また事故の発生場所であり、死亡した場所が自宅だったという意味ではありません。警察が公表する24時間以内の交通事故死者数とは、定義を分けて読んでください。
転倒は、小さなきっかけから起こります
消費者庁の2026年9月の注意喚起には、室内のコードにつまずく、浴室で滑る、ソファから立ち上がる際に転ぶなどの報告が紹介されています。大きな障害物だけでなく、普段意識しない場所にも確認する点があります。
転倒には、住環境だけでなく、体の状態、病気や薬の影響等が関わる場合もあります。繰り返すふらつきや、歩き方の変化等がある場合は、本人だけで原因を決めず、医療機関や地域の支援窓口へ相談します。
公的な報告にみる、身近な事故の例
掃除や移動など、いつもの動作でも
以下は、公的機関が公表した事故情報を短くまとめたものです。出典の公表・更新時期を示しており、個々の事故がその日に発生したという意味ではありません。報告された事例であり、全国の事故をすべて数えた一覧でもありません。
| 公表された場面 | 報告の要約 | 出典の公表・更新 |
|---|---|---|
| 台所の掃除 | 椅子に上って掃除していた80歳代女性が、椅子から落ちた。 | 消費者庁・2025年12月23日。 |
| エアコンの掃除 | 脚立を使っていた80歳代女性が落ち、右の肋骨付近を打った。 | 消費者庁・2025年12月23日。 |
| 室内の歩行 | コードにつまずいた70歳代の人が、右膝を骨折して入院した。 | 消費者庁・2026年9月11日。 |
| 掃除のために外した建具 | 壁に立てかけた引き戸が倒れ、80歳代の人が転倒して背中を負傷した。 | 東京消防庁・2025年12月10日更新。 |
| 室内の履物 | スリッパが脱げ、靴下で滑った70歳代女性が手首近くを骨折した。 | 国民生活センター・2025年10月29日。 |
出典:消費者庁・2025年の年末年始の注意喚起、消費者庁・2026年の家庭内転倒事故、東京消防庁「掃除中の事故に注意」、国民生活センター「医療機関ネットワーク事業情報からみた高齢者の家庭内事故」。
これらは「終活のための片付け中」と確認された事例ではありません。掃除、収納、家財整理で似た作業を行う際の注意点として紹介しています。
家の中の危険は、転倒だけではありません
国民生活センターの2025年の資料には、ストーブ前で眠り、やかんの蒸気で顔をやけどした報告や、飲料用の容器へ移した柔軟剤を誤って飲んだ可能性がある報告もあります。火気・熱い物、洗剤や薬の保管も、一緒に見直したい項目です。
同資料の対象は、2020年度以降に参画医療機関から寄せられた、65歳以上の家庭内事故情報です。全国で発生した事故の総数や、終活の片付けに限った統計ではありません。
家の中を見直す、6つの手順
以下は、日々の暮らしと作業の安全を考えるための当社の整理です。危険な場所へ上ったり、重い物を動かしたりして確認するものではありません。
本人が困っている動作を聞く
階段、立ち上がり、入浴、掃除、物の出し入れ等を振り返ります。怖いと感じた場面や、つまずきそうになった場所を、責めずに聞いてみましょう。
毎日の通り道を、安全に確認する
寝室からトイレ、居室から玄関など、よく使う経路を見ます。床の物、コード、敷物、段差、暗さを、危険な作業をせずに記録します。
無理な作業を、先に予定から外す
高い収納、窓の外側、重量のある家具、外した建具などを自分だけで扱う予定は、頼める方法へ切り替えます。届く範囲でも体調や姿勢に無理がないか確認します。
本人に合う環境と、頼む範囲を考える
日用品の位置、照明、使う部屋、片付ける量を見直します。手すりや設備等は専門家へ、身体や支援のことは医療・福祉の窓口へ相談します。
連絡先と、異変に気づく方法を用意する
入浴前の声掛け、作業する日の連絡、家族や支援先への連絡方法を考えます。一人暮らしでは、相談できる人や使える支援を地域の窓口と確認します。
小さく実行し、変化に合わせて見直す
通路の確認や作業の依頼など、進められることから整えます。体調、同居者、家財の配置、住まいが変わったときには、安全と負担をもう一度確認しましょう。
入浴中の事故と、ヒートショックに注意する
温度差だけでなく、入浴の習慣も確認する
寒い脱衣所から温かい浴槽へ移るなど、急な温度変化に伴う血圧の変動等による健康被害は、ヒートショックと呼ばれます。暖かい居室だけでなく、脱衣所、浴室、廊下等の環境も考えることが大切です。
一方、浴槽での溺死・溺水が、すべてヒートショックによるものと確認されているわけではありません。入浴中の事故には、体調、湯温や時間、立ち上がり、飲酒、薬の影響等にも注意が必要です。
参考:消費者庁「住環境における高齢者の事故について」、消費者庁「高齢者の事故・入浴中の事故」。
公的な目安を知り、本人の条件に合わせる
消費者庁では、入浴前に脱衣所・浴室を暖めること、湯温41度以下・湯につかる時間10分までを目安とすること等を案内しています。これは、すべての人に安全を保証する基準ではありません。持病や体調等によって、入浴方法を主治医等に確認してください。
| 確認したいこと | 備えの例 |
|---|---|
| 脱衣所・浴室の環境 | 入浴前に暖め、寒い部屋との温度差を減らす方法を考える。 |
| 湯温・時間 | 熱い湯や長湯を避け、公的な目安と本人への指示を確認する。 |
| 浴槽から出る動作 | 急に立ち上がらず、足元や姿勢に注意する。 |
| 食事・飲酒・薬・体調 | 食後すぐやアルコールが残るときは控える。睡眠薬・精神安定剤等と入浴のタイミング、体調の条件は医師・薬剤師へ相談する。 |
| 声掛け・連絡 | 同居者等に入浴を伝え、様子を確認する方法を話しておく。 |
表は消費者庁の注意点を参考にした当社の確認メモです。入浴のために、自己判断で薬を減らしたり中止したりするものではありません。
入浴の見守りを、一人暮らしでも考える
同居者がいない場合は、毎回の声掛けを前提にした方法だけでは対応しにくいことがあります。本人の希望と生活に合わせて、家族等との連絡、地域の支援、住まいの設備等を相談しましょう。
異変があれば、家の相談より救急の対応を優先します。呼び掛けに反応がないなどの緊急時は119番へ連絡し、指令員の指示に従ってください。
参考:総務省消防庁「119番緊急通報」。
終活の片付けを、無理に一人で進めない
「片付けたい」と「自分で運べる」を分ける
必要な物を選ぶ、思い出や書類を整理することは、本人の希望を残す大切な作業です。床の物を減らし、暮らしの動線を整えることも、安全への備えになります。
ただし、荷物をいったん廊下へ積む、高い場所へ上る、重い家具を一人で動かすなどの進め方では、作業中の危険を増やしかねません。「全部を一日で」「あと少しだけ」と急がず、選ぶ作業と運ぶ作業を分けて計画しましょう。
国民生活センターは、脚立・はしごを使わずに済む方法や、一人きりで作業しないこと、無理のない計画を検討するよう呼び掛けています。高所の掃除や荷物の出し入れを、頼む作業として先に分けることもできます。
片付けを始める前の確認メモ
| 作業・状態 | 安全な進め方を考える質問 |
|---|---|
| 高い棚・押入れの上段 | 上らずに選別できるか。取出しを家族や業者等へ頼めるか。 |
| 重い家具・箱 | 持ち上げ、運搬、階段の移動を本人一人で行う予定になっていないか。 |
| 通路に並べた荷物 | トイレや玄関への経路を塞がないか。作業中も歩く場所を確保できるか。 |
| 掃除機・敷物・濡れた床 | コードをまたがずに済むか。敷物のめくれや床の滑りに注意できるか。 |
| 外す建具・大きな物 | 倒れたり落ちたりしない方法で、対応できる人に作業を頼めるか。 |
| 洗剤や機器の清掃 | 表示・取扱説明書を確認しているか。洗剤を混ぜたり飲料容器へ移したりしていないか。 |
| 体調・作業量 | 疲れる前に区切れるか。今日やめる作業と、頼む作業が決まっているか。 |
表は当社の作業計画の例です。人を呼べばどの作業も安全になる、というものではありません。内容に合った業者・用具・設備等を確認します。
参考:東京消防庁「掃除中の事故に注意」、消費者庁・家庭内の転倒を防ぐ注意点。
本人の希望を聞き、勝手に処分しない
家族が手伝うときも、残したい物、よく使う物、必要な書類を先に確認します。収納場所が変わり過ぎて生活に支障が出ないよう、本人と一緒に新しい置き場所を決めてみましょう。
業者に依頼する場合は、作業範囲、運搬・処分の扱い、費用、当日の担当、残す物を確認します。財産や共有物等を処分する権限も、必要に応じて専門家へ相談してください。
家の環境を、本人の暮らしに合わせる
普段の動線と、使う設備から見直す
以下は、本人や建築等の専門家と話すための当社の確認例です。危険箇所の判定や、工事の設計を行う表ではありません。
| 家の場所・条件 | 確認したいこと |
|---|---|
| 寝室からトイレ | 夜に足元が見えるか。物やコード、敷物が通路にないか。 |
| 階段・玄関 | 手すり、段差、照明、履物、荷物を持って移動する習慣。 |
| 浴室・脱衣所 | 温度環境、滑りやすさ、浴槽への出入りと使う設備。 |
| 収納・日用品 | 日常使う物を、高所や深くしゃがむ位置から取り出す必要がないか。 |
| 家具の配置 | ベッドや座る場所、通路へ倒れそうな家具がないか。固定の方法を確認できるか。 |
| 台所・暖房の周り | 熱い物・火気・可燃物、機器の使い方、洗剤や薬の保管。 |
| 家事・維持管理 | 本人が続ける作業と、家族・業者等へ頼む作業を分けられるか。 |
参考:国土交通省「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」、東京消防庁「自宅の家具転倒対策」。
改修も、住み方の変更も選択肢です
よく使う部屋をまとめる、日用品の配置を変える、作業を頼む、手すり・照明・温度環境等を専門家へ相談する。今の家で暮らし続けるために、できることを比べます。
工事をする場合は、本人の身体状況、建物の状態、費用、名義や契約を確認します。賃貸では貸主の承諾、マンションでは管理規約と専有・共用の範囲も確かめます。器具を買えば必ず安全になる、改修で事故がなくなると考えず、使う人との相性を相談しましょう。
住まいの負担が大きい場合は、支援を使って暮らす方法と、住み替えを含む方法を比較できます。年齢だけで急いで売却を決めず、本人が大切にしたい暮らし、周辺環境、費用を合わせて考えます。
本人の注意に、環境と支援を組み合わせる
「もっと気をつけて」と伝えるだけでは、床のコード、段差、寒い脱衣所、危険な作業の予定は変わりません。本人を責めず、負担を減らす方法を一緒に考えることが、住まいの終活にもつながります。
よくあるご質問
家の中と交通事故の数字は、そのまま比べてよいのですか?
同じ対象年、年齢範囲、集計方法であることを確認して比べます。人口動態統計と警察の交通事故死者数など、定義が違う資料を混ぜて倍率を出さないようにします。死亡者数は、すべてのけがや事故の総数とも異なります。
入浴中に亡くなる事故は、すべてヒートショックですか?
いいえ。浴槽での溺死・溺水を、すべてヒートショックと断定するものではありません。温度差のほか、体調、入浴の習慣、湯温・時間、飲酒や薬の影響等にも注意します。
湯温と時間の目安を守れば、必ず安全ですか?
安全を保証するものではありません。公的な目安を確認し、本人の持病や体調、医師からの指示等に合わせます。薬を自己判断で中止せず、入浴の方法について相談してください。
終活の片付けは、しない方がよいのですか?
片付けること自体を避けるという意味ではありません。暮らしを整える選別と、危険な運搬・高所作業を分け、安全にできる量と方法を考えます。無理な作業は家族や対応できる業者等へ相談しましょう。
低い椅子や踏み台なら、高い場所の掃除をしてよいですか?
低い場所でも転落や転倒は起こり得ます。上らずに済む方法を先に検討し、体調や用具、場所に無理がある作業は控えましょう。一人で済ませようとせず、内容に合う依頼先へ相談します。
転倒は、段差をなくせば防げますか?
段差への対応は備えの一つです。コード、敷物、暗さ、履物、姿勢の変化、身体の状態等も関わります。環境と本人の状態を合わせて相談し、設備等は本人に合う使い方を確認します。
一人暮らしなら、何を準備しておくとよいですか?
危険な作業を頼む人、体調や生活の相談先、家族等との連絡方法を用意します。入浴や日々の状況の確認は、本人の希望と使える支援に合わせ、地域包括支援センター等へ相談できます。
終活専門不動産には、何を相談できますか?
住まいの管理や使い方、住み替え、売却、引継ぎなど、高齢期の暮らしに合わせた不動産の方針をご相談いただけます。診断・治療、介護等の支援、建物の工事や危険な作業は、内容に応じた専門家へ確認します。
住まいの不安を、具体的な相談につなげる
今困っていることから、整理しましょう
| 相談したい内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 急な異変、呼び掛けに反応がない等の緊急時 | 119番。指令員の指示に従う。 |
| ふらつき、けが、体調、持病・薬と入浴 | 医療機関、かかりつけ医等。 |
| 生活や介護の支援、一人暮らし、家族の負担 | 市区町村、地域包括支援センター等。 |
| 手すり・段差・温度環境、建物や設備の改修 | 建築士等、対応する専門業者。 |
| 高所の掃除、重量物等の危険な作業 | 作業内容に対応する専門業者等。 |
| 契約、処分する権限、登記・税務 | 弁護士・司法書士・税理士等、担当窓口。 |
| 住まいの管理・活用・売却、住み替え、引継ぎ | 終活専門不動産。 |
終活専門不動産では、高齢期の暮らしに合わせた住まいの管理・活用・売却、住み替えや引継ぎの方針をご相談いただけます。体調・治療・入浴方法は医療機関、生活・介護の支援は地域包括支援センター等、建物の診断・改修や危険な作業は対応する専門家・業者へ確認します。
今の家で暮らし続けたいけれど、掃除や階段が負担になってきた。親の家の片付けを、どう手伝うか迷っている。住まいの管理や住み替えも一緒に考えたい。今分かっていることと、気になることからお聞かせください。
住まいと不動産の今後を、
一緒に考えませんか。
浴室や階段、家の中の動き方が気になる。片付けや住まいの管理が負担になってきた。ご本人とご家族の希望を伺い、住み続けるための備え、住み替え、不動産の整理を一緒に考えます。方針がまだ決まっていなくても、ご相談いただけます。
終活専門不動産では、高齢期の暮らしに合わせた住まいの管理・活用・売却、住み替えや引継ぎの方針をご相談いただけます。体調・治療・入浴方法は医療機関、生活・介護の支援は地域包括支援センター等、建物の診断・改修や危険な作業は対応する専門家・業者へ確認します。