42社
設計コンサルも関与
施工業者だけでなく、選定を支援する設計コンサルも関わった事件です。
マンションの未来と、修繕積立金を守るために
談合問題から考える、
管理組合の対策と心構え。
「複数社から見積もりを取ったから安心」。その前提を問い直す事件が起きました。公的資料から事実を確かめ、専門家に任せながら管理組合ができることを整理します。
2026年9月28日の公取委命令を反映公正取引委員会・国土交通省等の公式資料に基づく解説
確認日:2026年10月14日
最初に、この3つ
42社
施工業者だけでなく、選定を支援する設計コンサルも関わった事件です。
約16.4億円
正確には16億3,788万円。管理組合の被害総額や返金額を示す数字ではありません。
見積の中身
各社が独立して提案できる募集・情報管理・選定手続きが大切です。
社数は両事件で重複する法人を除いた集計。公取委の行政上の認定・命令について説明しています。
01 / 事件の全体像
2026年9月28日、公正取引委員会は、関東地区のマンション大規模修繕工事を巡り、設計コンサル業者と施工業者による独占禁止法第3条違反(不当な取引制限)を認定し、排除措置命令と課徴金納付命令を出しました。
対象は、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県の管理組合が、株式会社リノシスコーポレーション又は株式会社翔設計に設計コンサル業務を委託して発注する工事です。
| 設計コンサル | 違反事業者・命令対象 | 課徴金総額 |
|---|---|---|
| リノシスコーポレーション関連 | 違反37社(施工業者36社+同社) 排除措置33社/課徴金33社 | 9億2,157万円 |
| 翔設計関連 | 違反20社(施工業者19社+同社) 排除措置18社/課徴金17社 | 7億1,631万円 |
| 両事件・重複除外 | 違反42社 排除措置38社/課徴金37社 | 16億3,788万円 |
同じ法人が両事件に含まれるため、社数は単純に足せません。個別の事業者名・課徴金額は公式の別表1・2をご確認ください。
この認定の対象範囲を、全国のすべての修繕工事や、当該事業者のすべての契約に広げて判断することはできません。自分のマンションが関係するかは、契約資料と公式の命令書等を確認します。
02 / これまでの経緯
国交省は、設計コンサルの不適切な誘導等に注意を促していました。安い委託料と、施工会社との関係を併せて見る必要が示されています。
両命令書は、この日以降に本件の行為が取りやめられたと記載しています。調査開始時の疑惑と、後の正式認定は分けて読みます。
公取委が処分を公表。同日、国交省も管理組合へ相談窓口や発注時の留意点を周知しました。
命令書が示す合意・調整の時期は、リノシス関連では遅くとも2021年9月27日以降、翔設計関連では遅くとも2021年11月16日以降です。個々の事業者の参加期間には違いがあります。
03 / どこで競争が失われた?
公取委が認定したのは、設計コンサルと特定の施工業者が協力関係をつくり、受注予定者を決める仕組みです。他の業者は、連絡された価格で見積もりを出す、又は参加を見送るなどして協力していました。
診断・設計・施工業者選定の支援等を委託
選定の支援を依頼 ↓
受注予定者と協力
予算等の情報を提供
コンサルと協議するなどして
他社の提示価格等を定める
価格の連絡・参加又は不参加の依頼 ↓
連絡された価格の提示等、又は見積もり合わせへの不参加
受注した施工業者 → 設計コンサルへ金銭の支払
公取委の概要資料は、原則として契約価格の5%を目安とする支払があったと説明しています。この5%は、工事費の上昇率や住民の損害率を示すものではありません。
公取委の認定内容を理解するための概念図です。個別工事の情報・金銭の流れを再現したものではありません。
管理組合のために選定を支援する人が、受注する側の利益に沿って動くと、判断の前提が偏るおそれがあります。こうした利害の衝突を利益相反と呼びます。担当者の所属や施工会社との関係、報酬の出どころを確認することが、対策の出発点になります。
04 / 相見積もりの限界
候補の集め方
紹介された会社だけで比べると、候補が偏る可能性があります。公募等も検討し、参加条件や除外理由に合理的な説明があるか確認します。
見積もりの前提
仕様・数量・工期・保証の違いで金額は変わります。各社に同じ資料を渡し、質問への回答や条件変更も公平に共有します。
情報と決定の記録
原本、質疑、比較表、選定理由を組合が確認できるようにします。専門家の説明を、次の役員にも伝わる形で残しましょう。
見積額が似ている、辞退があった、料金が安い。こうした事実だけで談合と断定することはできません。説明を求めるきっかけにし、資料と第三者の助言で確かめます。
この章の確認事項は、本件を踏まえた実務上の提案です。談合の有無を判定する検査項目ではありません。
05 / 管理組合が取れる対策
国交省は中立性・適正な手続きの確保や専門家の活用を案内しています。以下は、その考え方と公取委の指摘を踏まえて整理した実務上の提案です。行政が一律の義務として定めた手順ではありません。
管理規約、長期修繕計画、過去の工事記録を揃えます。理事会・修繕委員会・専門家の担当、比較・承認の方法、住民への説明の時期を文書にします。
担当者の所属・資格・実績、業務の範囲と料金を確認。施工会社との資本・人的関係、紹介料・手数料等の有無、受領する条件を、書面で説明してもらいます。
診断結果と提案をつなげて、「なぜ今回必要なのか」を聞きます。工事範囲・仕様・数量の根拠と、実施時期を検討できる項目について説明を受けます。
候補の入口を紹介だけに限定せず、公募等を検討します。同じ条件で見積もりを依頼し、組合が原本を直接受け取る仕組みも検討。情報を誰へ、いつ、どの条件で開示するかを決めます。
総額だけでなく、項目・単価・数量、施工体制、実績、保証、アフターケアを比較します。参加・除外の理由、ヒアリング内容、議決の経過も残します。
追加工事の承認方法、変更数量の確認、検査、保証を契約で明確にします。談合違約金の特約を検討する場合は、発動条件や割合を弁護士等と確認します。
診断・設計図書、見積原本、質疑、契約・変更契約、検査記録、保証書を管理組合で保管。担当役員が交代しても、決定の理由を追える状態にします。
公取委は、管理組合が開示を望まない予算、具体的な選定基準、参加業者名、他社の見積価格などの情報が、特定業者に有利に提供される場合を問題として挙げています。すべての情報を非公開にするという意味ではありません。公表する条件は公平に共有し、非開示と決めた情報は取扱いを明確にします。
国交省の2026年通知は、特約条項例の活用を紹介しています。採用は一律の義務ではなく、例文の割合も「○%」です。一定の率をそのまま使うのではなく、支払義務をめぐる争いや不払いのリスクも含め、弁護士等に相談して契約ごとに検討します。
06 / 心構えを、仕組みにする
任せることと、
確かめることは両立できます。
修繕積立金を守ることは、最低価格を選び続けることだけではありません。必要な工事、品質、保証、将来の維持費まで考え、提案の差を理解して判断します。
役員は交代し、得意な分野も違います。個人の経験に頼り切らず、複数人で確認し、議事録・比較表・資料保管で判断を引き継ぎます。
分からない言葉や数量は、そのままにしないで聞きます。報酬や利害関係を尋ねることも、専門家を選ぶための通常の確認として行いましょう。
気になる説明があれば、日時・発言・資料を整理して確認します。根拠が揃う前に個人や会社を非難せず、独立した専門家の助言につなげます。
平均的な工事費は、差額の説明を求める手がかりです。建物ごとの適正価格を保証する数字ではありません。危険箇所への緊急対応と計画工事は、必要性や安全性も踏まえて検討してください。
07 / 住まいの終活にもつながる
大規模修繕は、建物を維持するための共同の意思決定です。高齢期に住み続ける場合も、家族へ引き継ぐ場合も、将来どのような修繕と負担が見込まれるかを知ることが、住まいの選択に役立ちます。
修繕の話を「理事会だけのこと」にせず、総会資料を読み、必要な説明を聞くところから始めましょう。住まいの現状が分かると、これからの暮らしや家族への引継ぎも具体的に考えやすくなります。
08 / 今日できること
確認できた項目にチェックして、次の打合せで説明を求めたい点を整理してください。チェックはこの画面での確認用です。
すべてにチェックが付いても、談合がないことを保証するものではありません。疑いがある場合は資料を保全し、相談先につなげます。
09 / 疑いが出たとき
誰が、いつ、何を説明したか。気になった点を資料名や日付とともに記録します。
見積、募集条件、仕様、メール、議事録、比較表、契約と変更資料を保存。検討用のコピーと原本を分けます。
技術・発注の相談先と法律相談を使い分けます。違反が疑われる具体的事実は公取委へ申告できます。
契約解除や支払停止を急いで決めると、別の紛争になる可能性があります。工事の必要性・安全性も含め、契約と事実に即して弁護士等へ相談してください。
公取委への申告では、行為者、日時、場所、具体的行為などをできる限り明らかにし、資料の写しがあれば添付します。申告は、民事紛争の仲介や返金を保証する制度ではありません。
10 / 相談する相手を選ぶ
住宅・修繕の技術的な相談
建築士による住宅相談。契約前の見積もりについては、見積チェックの利用条件も確認できます。
03-3556-5147/平日10:00〜17:00
相談の案内を確認 ↗建物の維持管理・管理組合運営
管理組合の運営や維持管理の中立的な相談。維持管理の相談窓口を確認してください。
維持管理:03-3222-1519
運営・規約:03-3222-1517
平日9:30〜17:00
独占禁止法違反が疑われる事実
具体的な事実と資料を整理して申告。返金交渉や損害賠償の判断とは別の手続きです。
申告方法を確認 ↗契約解除・支払・損害回復
契約書、工事資料、気になった経緯を持参します。専門家派遣やマンション相談の制度は、所在地の自治体にも確認しましょう。
国交省の案内を確認(PDF)↗住まいるダイヤルの見積チェックは、談合の判定や適正価格の保証ではありません。大規模修繕では図面から個々の数量を確認せず、既にトラブルがある場合は電話相談へ案内しています。最新の受付日時・利用条件は各窓口の公式案内をご確認ください。
11 / よくある質問
通数だけでは確認できません。本件では、他社が示す価格まで事前に調整されていました。候補者の集め方、各社の関係、共通の見積条件、情報管理、選定理由を一緒に確認しましょう。
方式そのものが違法ということではありません。国土交通省も、透明な業者選定等を支える有効な方法と説明しています。担当者の中立性、施工会社との関係、業務範囲を確認し、管理組合が決定の経過を把握できるようにします。
価格だけでは判断できません。建物の劣化、工事範囲、仕様、数量、立地、工期、労務費・材料費などで変わります。平均価格は質問の手がかりとして使い、個別の適正価格と決めつけず、差額の理由を尋ねてください。
料金と業務範囲、担当体制をセットで比べます。施工会社から受け取る金銭の有無や条件も確認してください。安いこと自体が不正の証拠ではありませんが、なぜその料金で業務ができるのかを説明してもらうことは大切です。
名称だけで一律に判断できません。公取委は、受注を条件とする取決めや、有利な情報提供・参加条件への働きかけが自由な競争をゆがめるおそれを指摘しています。支払の目的、条件、実際の行為を確認する必要があります。
課徴金は国に納付するもので、管理組合への返金とは別です。損害賠償や違約金等の請求は、契約、対象工事、損害、請求期限などの検討が必要です。資料を揃えて弁護士等へ相談してください。
抑止や損害回復に備える選択肢の一つです。国交省は条項例の活用を紹介していますが、採用が義務ということではありません。発動条件、割合、支払義務をめぐる争い、回収の見通しまで専門家と確認します。
具体的な事実を公取委へ申告することはできます。申告は返金や民事紛争の仲介を保証する制度ではありません。契約上の対応や損害回復、請求期限については別途法律相談が必要です。
終活専門不動産に相談する
住み続けるか、住み替えるか、家族へどう引き継ぐか。住まいの状況とご本人・ご家族の希望を整理するところからお話を伺います。
大規模修繕の技術的な確認は建築・マンション管理の専門家へ、独占禁止法違反の疑いは公取委へ、契約や損害賠償の相談は弁護士等へ。相談内容に応じた専門家への確認につなげながら、住まいの選択を考えます。
情報の確認日:2026年10月14日。事件の説明は公的資料の要約、対策と心構えは資料を踏まえた記事上の提案です。個別マンションの談合の有無、適正価格、損害額、契約の法的効果を判定するものではありません。社数の重複と、課徴金・損害・手数料の違いに注意して整理しています。