相続土地国庫帰属制度の実績と、数字の読み方
実績を確かめ、土地の方針へ。
相続した土地を国に引き継ぐ制度は、実際にどれくらい使われているのでしょうか。申請した件数、国へ所有権が移った件数、途中で取り下げた件数は、それぞれ意味が違います。公表された数字と時点を確かめ、制度の利用状況を見てみましょう。
このページでは、法務省の速報統計をもとに、最新の累計件数、土地の分類別の内訳、過去の資料との違いを整理します。数字から自分の土地の見通しを決めつけず、土地の条件、準備、費用、ほかの選択肢へつなげて考えます。
帰属件数を申請件数で割っても、自分の土地の「成功率」にはなりません。利用実績を知ることと、一つひとつの土地が条件を満たすかを確認することを、分けて進めましょう。
情報確認日:2026年10月8日
終活専門不動産では、相続した土地の管理・活用・売却や、今後の方針をご相談いただけます。国庫帰属の条件・審査・費用は法務局へ、申請書類の作成は対応する弁護士・司法書士・行政書士へ、境界や測量は土地家屋調査士等、法律・登記・税務は各専門家へ確認します。
- 申請件数
- 5,997件
- 国庫帰属件数
- 3,119件
- 取下げ件数
- 1,139件
2026年8月31日現在・速報値・累計件数。各項目を合計した割合や、個別の承認率を示すものではありません。
最新の累計実績は、どれくらい?
2026年8月31日現在の法務省速報値
法務省が2026年9月16日に公表した、制度の運用開始以降の累計件数です。いずれも速報値で、今後の公表で更新される場合があります。
| 公表されている項目 | 件数 |
|---|---|
| 申請件数 | 5,997件 |
| 国庫帰属件数 | 3,119件 |
| 却下件数 | 85件 |
| 不承認件数 | 100件 |
| 取下げ件数 | 1,139件 |
取下げの内訳は、有効活用の見込みが生じたもの586件、却下・不承認であることが判明したもの405件、その他148件です。
出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」2026年9月16日公表・8月31日現在。最新の分類別内訳は次の節に掲載しています。却下・不承認の理由は、一つの事件に複数認められる場合があります。
「承認」と「国庫に帰属」は違います
申請した後には、審査を経て承認を受け、負担金を納める段階があります。負担金を納付した時点で、土地の所有権が国へ移ります。承認通知を受けただけで、所有権が移ったという意味ではありません。
今回参照した統計では「帰属件数」が掲載されており、承認件数は独立した項目として示されていません。帰属件数を承認件数と呼び替えたり、掲載がない項目をゼロ件と判断したりしないようにします。
件数は、人数や面積とは別です
このページの単位は、公表資料に合わせた「件」です。利用した人の数や、国へ移った土地の面積を表すものではありません。複数の土地や共有者が関わることもあるため、「申請件数と同じ人数が利用した」と読み替えないことが大切です。
相続土地国庫帰属制度は2023年4月27日に始まりました。上記は2026年度だけの件数でも、2026年8月の1か月だけの件数でもありません。
申請の地目と、帰属した土地の種目を見る
申請件数の内訳は「地目別」
| 申請時の地目別区分 | 申請件数 |
|---|---|
| 田・畑 | 2,335件 |
| 宅地 | 2,091件 |
| 山林 | 902件 |
| その他 | 669件 |
帰属件数の内訳は「種目別」
| 国庫に帰属した土地の種目 | 帰属件数 | 帰属全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 宅地 | 1,164件 | 37.3% |
| 農用地 | 989件 | 31.7% |
| 森林 | 203件 | 6.5% |
| その他 | 763件 | 24.5% |
出典:法務省・2026年8月31日現在の速報統計。割合は、各種目の帰属件数を帰属全体の件数で割り、小数点以下1桁に丸めた当社計算です。
2つの表から、種類別の「通りやすさ」を出さない
申請の表は「地目」、帰属の表は「種目」という別の分類です。また、申請した時期と、審査・納付を経て帰属する時期も違います。同じ土地を同じ期間追った成績表として、そのまま割り算をするものではありません。
例えば、申請の「田・畑」と帰属の「農用地」を比べて、その種類の承認率を計算するといった読み方は避けます。「その他」の内訳も、2つの表で同じ範囲の土地だと決めつけないようにします。
この実績から分かるのは、宅地だけでなく農用地・森林等でも、実際に国庫へ帰属した例があることです。ただし、同じ種類ならどの土地も引き取られる、ということではありません。現地の状態や権利、管理上の条件は、個別に確認します。
実績を、自分の土地の確認につなげる6つの手順
以下は、数字を見てから利用を検討するための当社の確認手順です。制度の審査結果や、承認されるまでの期間を予測する手順ではありません。
公表日・集計日・数字の種類を確認する
どの時点の、申請・帰属等の何の件数かを確かめます。年度の件数、累計件数、全国と地域の数を分け、以前の記事を現在の実績と取り違えないようにします。
取得した理由と、名義・共有者を確認する
相続や相続人への遺贈で取得した土地か、誰が所有しているかを整理します。共有の場合は、申請する人と必要な同意・手続きを法務局へ確認します。
現地と資料から、土地の条件を整理する
所在地、範囲、境界、建物や権利、地上・地下の状態などを確認します。分からない点をメモし、安全に確認できない場所は専門家へ相談します。
法務局へ相談し、準備の範囲を確かめる
土地の状況が分かる資料を用意し、必要な書類と確認事項を聞きます。測量、解体、伐採等へ費用をかける前に、土地全体の条件を整理します。
費用・期間と、ほかの選択肢を比べる
手数料、負担金、資料や現地の準備、専門家へ頼む費用を確認します。国庫帰属のほか、売却・活用・保有等の条件も比較します。
手続きと、所有権が移るまでの管理を決める
申請後の連絡、追加確認、負担金の納付等を担当する人と予定を整理します。取下げや別の活用を選ぶ場合も、関係窓口へ確認し、土地の管理が途切れないようにします。
過去の数字や、別の資料を読むときは?
過去の全国集計と比べるなら、時点をそろえる
財務省の2026年6月17日の資料には、2026年3月末時点の全国の帰属件数として2,606件が示されています。上記の8月末の集計と比べると、国庫に帰属した累計が増えていることが分かります。
ただし、速報値の時点差を、そのまま「この期間に承認された新規件数」と呼び替えるものではありません。基準日と項目をそろえ、必要に応じて公表内容の更新も確認します。
同じ資料にある「財務局引受件数」は、全国総数ではありません
同じ財務省資料では、財務局等の引受けの対象となる宅地・その他を合わせた数が、全国の帰属総数とは別に示されています。
| 財務省資料に示された項目 | 2026年3月時点の数値 | 読み方 |
|---|---|---|
| 財務局引受件数 | 1,586件 | 宅地とその他を対象にした数。全国の帰属総数とは対象が違う。 |
出典:財務省「相続土地国庫帰属財産の評価」2026年6月17日・資料1。
全国の帰属総数の推移に、この財務局の数を混ぜると、実際とは違う増減に見えてしまいます。グラフや記事の数字を見るときには、タイトルだけでなく、対象・注記を確認しましょう。
割り算や差し引きだけでは、分からないこともあります
現在の累計帰属件数を、累計申請件数で割った数は、申請した土地をすべて同じ期間追って判定した成功率ではありません。新しく申請された土地と、以前から手続きが進んだ土地が、同じ集計時点に含まれています。
また、申請から帰属・却下・不承認・取下げ等を差し引いた残りを、すべて「審査中」と断定することもできません。承認後の納付までの段階等と、掲載項目の違いを確認する必要があります。
集計にない審査中・相談等の件数を、こちらで推定して公式実績のように表示しないことが大切です。数字は制度の利用状況を知る資料として使い、自分の土地の条件確認とは区別します。
取下げの意味と、利用前の実務を考える
取下げを、一律に「失敗」と考えない
申請を取り下げる事情には、土地の活用先が見つかる場合と、条件に合わないと分かる場合などがあります。国へ引き継ぐこと以外の方針へ変わった案件もあるため、取下げ全体を不承認と合算したり、すべての人が土地を手放せなかったと解釈したりしないようにします。
利用を考える側も、相談や調査の途中で別の選択肢が見つかる場合があります。相手と条件が合うか、権利の移転や費用をどうするかは、改めて確認します。
申請後に売却先が見つかったときは、売却前に担当の法務局へ連絡し、取下げ等の手続きを確認します。国庫帰属の申請をしたことだけで、民間での活用や所有権移転まで自動的に進むものではありません。
却下・不承認は、条件や資料を確認するきっかけに
申請できない土地の要件と、審査で承認できないと判断される土地の要件は区別されています。建物や境界、土地の権利、管理・処分を妨げる物等の条件を、資料と現地から確かめます。
統計の理由欄には複数の理由が付く場合があるため、理由の件数を足して土地の件数にしたり、理由別に成功率を計算したりしないようにします。ここでは理由一覧の転載より、自分の土地について必要な確認を進めることを重視します。
手数料だけで、国への引継ぎが完了するわけではありません
| 費用の段階 | 確認すること |
|---|---|
| 申請時の審査手数料 | 土地一筆につき14,000円。取下げ・却下・不承認の場合も返還されません。 |
| 承認後の負担金 | 標準的な管理費用を考慮して算定。土地の種目、区域、面積等により異なります。 |
| 申請の準備や依頼 | 書類取得、現地の確認、必要な整備、専門家の支援等を個別に見積もります。 |
出典:法務省「制度の概要・審査手数料」、法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」。
負担金は、すべての土地が同じ額とは限りません。実績に帰属例がある種類の土地でも、費用がその例と同じになると決めず、具体的な条件と通知を確認します。
測量や準備工事は、必要性から相談する
境界確定測量や境界確定図の提出が、すべての申請で一律に必須というわけではありません。ただし、現地で土地の範囲や申請者が認識する境界を明らかにでき、必要な図面・写真等をそろえることは必要です。争いがある場合も含め、法務局や専門家へ確認します。
建物を解体したり、樹木を伐採したりしても、別の条件を満たさない場合があります。先に大きな支出を決めず、土地全体の状況と、必要な準備の範囲を整理しましょう。
実績を知った後は、土地の選択肢を比較する
国庫帰属だけで、すべての土地を整理するものではありません
| 土地の方針 | 比較しておきたいこと |
|---|---|
| 国庫帰属を検討する | 申請できる人と土地の条件、準備、費用、審査・納付の手続き。 |
| 売却を検討する | 所在地・需要・権利・状態、買い手との条件、費用と所有権移転。 |
| 貸す・活用する | 利用する人、使い方、契約、法令上の条件、管理と費用。 |
| 所有しながら管理する | 今後の使用予定、管理担当、税や維持費、家族への引継ぎ。 |
表は、方針を比べるための当社の確認例です。どの方法が適するかは、土地の状況と本人の希望から個別に考えます。売却や民間の引受けも、相手が見つかることや、希望どおりの条件を保証するものではありません。
有料での引取り等を提案された場合も、契約する相手、費用、解約、所有権移転の完了、残る義務を確認します。「引き受ける」という言葉だけで、土地の管理や名義の問題が解決したと判断しないようにしましょう。
本人と家族で、残す理由と負担を話す
使う予定がある、思い入れがある、遠方で管理が難しい、毎年の支払いが負担になる。土地を持ち続ける理由や、手放したい事情はさまざまです。件数の多い・少ないだけで決めず、本人の希望と現実の管理を話してみましょう。
共有者がいる場合は、関係する人と必要な手続きを整理します。誰が土地を調べ、相談し、費用や方針を決めるかを確認しておくと、次に進めることが明確になります。
制度の詳しい条件は、専用の案内へ
このページは実際の件数と、その読み方を中心にしています。申請できる人、引き取れない土地、費用、相談から納付までの詳しい流れは、制度の案内ページもご覧ください。
よくあるご質問
この件数は、2026年度だけの実績ですか?
いいえ。掲載した法務省の最新集計は、制度の運用開始以降の累計です。公表日、集計時点、速報値であることを確認し、年度や1か月の件数と分けて読んでください。
帰属件数は、承認された件数と同じですか?
同じ意味ではありません。承認を受けた後、負担金の納付で所有権が国へ移ります。今回参照した統計では帰属件数が掲載されているため、承認件数と呼び替えないようにします。
帰属件数を申請件数で割れば、成功率が分かりますか?
申請した時期や手続きの段階が違う土地をまとめた累計の比率なので、個別の承認率や成功率にはなりません。自分の土地が条件を満たすかは、権利・現地・資料等を確認して判断します。
差し引いた残りは、すべて審査中ですか?
そのように断定できません。承認後の納付等の段階と、公表項目の違いを確かめる必要があります。統計にない項目を、計算だけで公式件数として補わないようにします。
取下げは、全件「引き取ってもらえなかった」ということですか?
いいえ。活用の見込みが生じた場合も含まれています。ただし、活用の見込みと、売却や引受けが完了したことも別です。実際の方針と手続きは、土地ごとに確認します。
同じ地目の帰属例があれば、自分の土地も対象ですか?
種類だけでは決まりません。また申請の地目と帰属の種目は、同じ分類として扱わないようにします。名義・取得経緯、建物や権利、境界、管理・処分の条件等を法務局へ相談します。
申請したり承認されたりした後、管理はすぐにやめられますか?
申請や承認の通知だけで、所有権が国へ移るわけではありません。負担金の納付で帰属するまでの管理や連絡を整理します。取下げ・却下・不承認等の場合も、その後の土地の方針を考える必要があります。
件数を見ても、自分の土地をどうするか迷う場合は?
土地の資料と、分かる範囲の状況、本人・家族の希望をまとめて相談できます。法務局には制度の条件を、終活専門不動産には管理・活用・売却等の方針を、内容に応じて相談してください。
土地の方針を、具体的な相談につなげる
資料がそろいきっていなくても、分かることを整理する
| 相談したい内容 | 主な相談先 |
|---|---|
| 制度の要件、申請、審査、費用、取下げ等 | 土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局。 |
| 申請書や添付書類の作成支援 | 対応する弁護士・司法書士・行政書士。依頼する範囲を確認。 |
| 土地の範囲、境界や測量、関連する資料 | 土地家屋調査士等。争いは弁護士等へ。 |
| 相続・共有・権限、登記・税務 | 弁護士・司法書士・税理士等、担当窓口。 |
| 農地の利用等 | 農業委員会等、内容に応じた地域の窓口。 |
| 管理・活用・売却、今後の不動産方針 | 終活専門不動産。 |
書類作成の支援と、申請手続きの代理は別です。国庫帰属では、本人または法定代理人による申請を基本とし、任意代理で手続き全体を任せられると考えず、可能な支援と本人が行うことを確認してください。
参考:法務省Q&A・書類作成、申請と代理、法務省「制度の相談対応」。
終活専門不動産では、相続した土地の管理・活用・売却や、今後の方針をご相談いただけます。国庫帰属の条件・審査・費用は法務局へ、申請書類の作成は対応する弁護士・司法書士・行政書士へ、境界や測量は土地家屋調査士等、法律・登記・税務は各専門家へ確認します。
遠方の土地が残っている。家族に管理の負担を引き継ぐことが気になる。国庫帰属と売却・活用を比べたい。所在地や名義、今分かっていることからお聞かせください。
相続した土地の今後を、
一緒に考えませんか。
相続した土地の管理が負担になっている。売却できるのか、国庫帰属制度を検討した方がよいのか迷っている。土地の状況とご希望を伺い、管理・活用・売却や引継ぎの方針を整理します。まだ方針が決まっていなくても、ご相談いただけます。
終活専門不動産では、相続した土地の管理・活用・売却や、今後の方針をご相談いただけます。国庫帰属の条件・審査・費用は法務局へ、申請書類の作成は対応する弁護士・司法書士・行政書士へ、境界や測量は土地家屋調査士等、法律・登記・税務は各専門家へ確認します。